断食・ファスティングの注意点|避けるべき人と安全性の限界

断食・ファスティングの安全な行い方を表す白黒フラットイラスト

断食やファスティングという言葉は、健康や体づくりの話題のなかで頻繁に見かけます。ただし同じ言葉が指している中身は人によってかなり違い、食事を軽くする程度のものから、専門職の管理がなければ危険なものまで幅があります。安全に扱えるかどうかは、方法の細かさよりも、自分がそれをやってよい状態なのか、どこでやめるのかをあらかじめ決めているかどうかで大きく変わります。

この記事は、執筆時点で一般に説明されている内容を安全側に寄せて整理したものです。何時間空けるか、何日続けるか、その間に何を口にするかといった実行手順は示しません。体の状態は人によって違い、同じ手順が誰にでも当てはまるものではないためです。実際に行うかどうかは、必ず医師などの専門職に相談したうえで判断してください。体調に不安がある状態で、この記事だけを根拠に始めないでください。

目次

断食(ファスティング)という言葉が指すもの

まず言葉の整理から入ります。読み手と書き手が別のものを思い浮かべたまま話が進むと、注意点も噛み合わなくなるからです。

呼び方が同じでも中身は違う

断食という言葉は、宗教的な慣習、医療機関の管理下で行われるもの、検査や処置の前に食事を控えること、そして健康法として紹介されるものまで、性質のまったく異なるものをまとめて呼んでしまいがちです。ファスティングというカタカナ表記になると、商品やサービスの説明の一部として使われることも増えます。同じ名前で語られていても、想定されている長さ、管理の有無、対象になる人の条件は、それぞれ別ものだと考えたほうが安全です。

そのため、誰かが良い結果を語っていても、その人が指している断食と、自分が思い浮かべている断食が同じとは限りません。情報に触れたときは、それがどの種類の話なのかを確かめるところから始めると、判断を誤りにくくなります。管理された環境で行われた話を、自宅で一人で真似できる話として読み替えてしまうのが、いちばん起きやすい取り違えです。

この記事が扱う範囲

ここで整理するのは、健康法として紹介される断食に自分で取り組もうとする場面の考え方です。医療機関で治療の一部として行われるものや、検査前の絶食の指示は対象にしません。それらは目的も管理体制も違っていて、担当の医師や医療機関の指示に従うことが前提だからです。指示された内容と、この記事に書かれた一般論が食い違った場合は、指示のほうが優先されます。

また、具体的な手順を並べることもしません。手順を書けば、体の条件がまったく違う人がそのまま真似してしまうおそれがあります。代わりに、始める前に確認すること、そもそも自分で行わないほうがよい場合、相談の仕方、やめる判断という順に並べます。読み終えたときに「やり方が分かった」ではなく「自分は誰に相談すべきか分かった」となる形を目指しています。

始める前に立ち止まって確認したいこと

興味を持った時点でいきなり食事を抜くのではなく、その手前に置いておきたい確認があります。順序を決めておくと、勢いで始めてしまう事態を避けられます。

断食を検討するときに、実行より先に踏んでおきたい確認の順序 始める前に踏む順序 目的と今の体調を書き出す 持病や服薬の有無を確認する かかりつけ医に相談する 中止する目安を決めておく

目的をはっきりさせる

何のためにやろうとしているのかを、自分の言葉で書けるかどうかを確かめます。見た目を変えたいのか、食べ過ぎが続いたので生活を立て直したいのか、体の調子が気になっているのか。目的によって、そもそも断食が選択肢に入るのかどうかが変わります。とくに、体の不調が気になっていることが動機になっている場合は、断食を検討するより先に、その不調そのものを医療機関で診てもらう順番のほうが安全です。不調の原因が別にあるとき、食事を抜くことは事態を分かりにくくするだけになりかねません。

目的が言葉にならないまま始めると、うまくいっているのかどうかを自分で判断できません。判断できないものは、やめどきも分かりません。書き出す作業は面倒に見えますが、あとで自分を守る材料になります。

今の体調と生活を書き出す

直近の睡眠、仕事や学校の予定、通院や服薬の状況、体重が最近大きく動いていないか、女性であれば月経の状況など、いま自分がどういう状態なのかを一度書き出しておきます。相談するときにそのまま使えますし、途中で調子が変わったときに、変化があったのかどうかを比べる基準にもなります。

予定の確認も軽く見ないでください。集中力が要る作業、車の運転、高所や機械を扱う仕事、長時間の外出が控えているなら、その時期は候補から外すという判断が先に立ちます。ふらつきや集中力の低下は、本人が気づく前に周囲が気づくことがあります。自分だけでなく他人を巻き込む場面があるかどうかは、実行の可否を分ける材料です。

自己判断で行わないほうがよい人

断食は、誰でも試せる軽い生活習慣の工夫ではありません。次のような状況にあたる人は、自分だけの判断で始めないでください。医師に相談したうえで、行わないという結論になることも十分あります。

自己判断で始めず、医師への相談が前提になる状況の例 医師への相談が前提になる例 妊娠中・授乳中 成長期の子ども 持病の治療中 薬を飲んでいる 摂食障害の既往 高齢の方・体調不良時 当てはまらなくても、自己判断では始めない

体の状態がふだんと違う時期にあたる人

妊娠中や授乳中の人、成長期の子どもや若年層、高齢の方は、必要とされる栄養や体力の余裕がふだんと異なります。体を作っている時期や、体力の予備が少ない時期に食事を減らすことは、想定していない影響につながる可能性があります。風邪などで体調を崩している最中、けがの回復期、大きな手術や治療の前後も同じ扱いです。

また、摂食障害の既往がある人、食事の量や体重のことを考えると強い不安が出る人も、自己判断で行うべきではありません。食事を制限する行為そのものが、以前の状態を呼び戻すきっかけになりうるためです。この場合は、断食の可否よりも先に、専門の医療機関へ相談することを優先してください。

治療や薬が関わっている人

持病があって通院している人、なんらかの薬を飲んでいる人は、食事の量やタイミングが治療そのものに関わっていることがあります。薬によっては、食事との関係が服用方法に組み込まれているものもあります。自己判断で食事を抜くと、薬の効き方が想定と変わることも考えられます。したがって、まず処方している医師や薬剤師に、断食を検討していること自体を伝えるところから始めます。

健康診断で指摘を受けている項目がある人、家族に同じ傾向がある人も、同様に相談してから決めてください。数値が気になるからこそ自分でなんとかしたいという動機は自然ですが、その動機が強いときほど、独断で踏み込みやすくなります。

医師や専門職に相談するときの整え方

相談してくださいと言われても、何をどう話せばよいのか分からないという声はよく聞きます。伝える内容を先に整えておくと、短い診察時間でも話が通じやすくなります。

受診前にまとめておくと話が早い項目

持って行きたいのは、いま飲んでいる薬が分かるもの、通院している場合はその内容、健康診断の直近の結果、そして自分がやろうとしている内容と目的です。薬の情報は、名前をうろ覚えで伝えるより、手元の記録をそのまま見せたほうが確実です。目的は、体重のことなのか、生活習慣の立て直しなのか、体調の不安なのかを分けて伝えると、医師の側も判断しやすくなります。

そのうえで、聞くことを決めておきます。自分の状態で行ってよいのか、行うとしたら気をつける点は何か、どうなったら中止して連絡すべきか、この三つは共通して確認しておきたい内容です。とくに三つめは、あとで自分の判断を助ける材料になります。相談先は、まずかかりつけ医が候補になります。かかりつけがない場合でも、通院歴のある診療科や、健康診断を受けた医療機関が入口になります。医療機関を探す場合は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)の公式案内から地域や診療科を指定して検索できます。自治体の健康相談窓口については、お住まいの市区町村の公式案内を確認してください。

安全側に倒すという考え方

断食について調べると、細かい手順の説明に目が行きがちです。しかし安全という観点で先に決めるべきなのは、続け方ではなく、やめ方と土台の部分です。

決めるべきなのは、やり方よりやめ方

実行の前に、どうなったらやめるのかを具体的な言葉で決めておきます。これを決めずに始めると、体調が落ちてきたときに「もう少しで区切りだから」という気持ちが働き、やめる判断が遅れます。せっかく始めたのだからという感覚は、体の状態とは無関係に生まれるものなので、判断の材料にしてはいけません。決めた中止の目安は、始める前に紙やスマートフォンに書いておき、迷ったらそれに従うと決めておくのが安全です。

もう一つ、周囲に伝えておくことも安全側の工夫です。同居している人や職場の近い人に、いま食事を控えていることを言っておけば、様子がおかしいときに気づいてもらえます。一人暮らしで誰にも言わずに行うのは、変化に気づく人がいないという意味で、リスクの高い進め方です。

水分と生活リズムを軽く見ない

食事の話に注目が集まる一方で、水分が足りなくなる問題は見落とされがちです。ふだんの食事からも水分は入っているため、食事を減らすと、意識していないところで水分の量が変わります。暑い時期や汗をかく環境では、この差はさらに大きくなります。何をどれだけ飲むべきかは体の状態によって変わるので、ここでも相談の際に確認しておく項目に含めてください。

睡眠や活動量も同じです。睡眠が乱れている時期や、運動量が普段より多い時期は、体にかかる負担が読みにくくなります。生活が落ち着いていない時期をわざわざ選ばない、というだけでも安全側に寄せられます。逆に言えば、忙しくて生活が乱れているときこそ手っ取り早く整えたいと考えがちで、その発想は順序が逆になっています。

途中でやめる判断と、そのあとの戻し方

始めたあとに最も大事なのが、この判断です。やめることは失敗ではなく、あらかじめ用意しておいた正しい手順のひとつだと考えてください。

体調に変化が出たときに取る行動の分かれ方 体調に変化が出たときの動き めまい・強い倦怠感など その場で中止する 医療機関に相談する

すぐに中止したほうがよいサイン

めまいや立ちくらみ、動悸、冷や汗、強い倦怠感、頭痛、吐き気、手の震え、意識がぼんやりする感じ、いつもと違う不安感やいらだち。こうした変化が出たときは、様子を見ずに中止してください。とくに、立ち上がったときにふらつく、視界が暗くなる、といった感覚は、その場で転倒につながる危険があります。運転中や階段、入浴中は、その危険が大きくなります。

症状が強いときや休んでも改善しないときは断食を中止し、速やかに医療機関へ相談してください。意識がはっきりしない、呼びかけに反応しない、けいれんしている場合は119番で救急要請してください。意識が低下している人に飲み物や食べ物を無理に口から与えると窒息のおそれがあります。特に糖尿病治療中でインスリンや一部の血糖を下げる薬を使っている場合は、低血糖が急速に重症化することがあります。持病や服薬がある人は軽い症状でも早めに医療者へ連絡してください。参考:米国NIDDK「低血糖の症状と対処」。

やめたあとに気をつけたいこと

中止したあと、その反動で一気に食べてしまう流れは起きやすいものです。落ち着いて食べられる状況を作る、一人で決めきらずに相談するといった工夫が要ります。中止したときの状況と体の変化は記録しておいてください。次に医師へ相談するときの材料になりますし、同じことを繰り返さないための手がかりになります。

また、うまくいかなかったからもっと厳しくしよう、という方向へ考えを進めないでください。合わなかったという事実が出たのであれば、次に必要なのは強度を上げることではなく、別の方法を検討することです。ここで無理を重ねる進み方が、体調を大きく崩す入口になります。

効果をめぐる情報との付き合い方

断食に関する情報は量が多く、期待をあおる書き方も混じります。読み方の目安を持っておくと、振り回されにくくなります。

断定的な表現に出会ったときの見方

体重がどれだけ減る、体の中がきれいになる、体質が変わる、といった言い切りに出会ったら、その根拠が何なのか、誰にでも当てはまる話として書かれていないかを確かめてください。人の体は条件が違うので、同じ行動が同じ結果につながるとは限りません。効果を約束する表現、商品やサービスの購入とセットになっている説明、体験談だけで組み立てられた記事は、判断材料としては弱いものだと考えてください。

体験談は、その人に起きたことの記録であって、自分に起きることの予測ではありません。良い変化の話は残りやすく、合わなかった話は表に出にくいという偏りもあります。読むこと自体は構いませんが、自分の判断の根拠にはしないという線引きが必要です。

断食以外の選択肢も並べて比べる

生活を整えたいという目的なら、選択肢は断食だけではありません。食事の内容や量の見直し、食べる時間帯の乱れを直す、睡眠を確保する、日常の中で体を動かす機会を増やすなど、続けやすく戻しやすい方法が先に検討できます。極端な方法ほど途中でやめざるをえなくなりやすく、その反動も大きくなりがちです。

断食を選ぶかどうかは、こうした選択肢と並べて比べたうえで、専門職の意見を聞いて決めるものです。最初から断食ありきで情報を集めると、自分に都合のよい情報だけが目に入ります。順番として、目的を決める、選択肢を並べる、相談する、という流れを保つことが、結果的にいちばん安全な進め方になります。

糖尿病・妊娠・摂食障害の既往がある場合は特に慎重に

米国国立糖尿病・消化器病・腎疾病研究所(NIDDK)は、糖尿病の人が断食を行う場合、薬との組み合わせによって低血糖だけでなく高血糖や脱水なども問題となるため、医療者による計画が必要と説明しています。インスリンなどの薬を自己判断で減量することは危険です。

妊娠・授乳中の人、成長期の子ども、摂食障害の既往がある人、低体重や栄養状態に問題がある人などは、健康法としての断食を自己判断で始めないでください。体重管理が目的なら、無理な食事制限より食事の質・活動・睡眠などを医療者と相談する方法があります。

参考:NIDDK・糖尿病と断食の安全性、NIDDK・間欠的断食と糖尿病の研究。

よくある質問

健康な人であれば、自分の判断で始めてもよいのでしょうか

健康だと思っていても、自覚のない体の状態や飲んでいる薬の影響が隠れていることがあります。この記事では具体的な手順を示していませんし、行ってよいかどうかを一般論で判定することもできません。始めるかどうかは、自分の状態を知っている医師に相談したうえで決めてください。

短い時間だけ食事を空けるやり方なら安全ですか

短ければ安全と言い切れるものではありません。同じやり方でも、持病や服薬の有無、妊娠や授乳の有無、年齢、その日の体調によって、体にかかる負担は変わります。短時間だから相談は不要と考えず、自分が当てはまる条件があるかどうかを先に確認してください。

体重や体の変化について、どのくらいの結果を期待できますか

この記事では、減る体重や必要な期間といった数値を示しません。人によって前提が違うため、一般論として書いた数字はそのまま当てはまらず、かえって無理を招くおそれがあるからです。効果の見込みについては、自分の状態を把握している医師に確認するのが確実です。

途中で気分が悪くなりました。少し休めば続けてよいですか

続けるかどうかを自分で判断せず、まず中止してください。めまいや動悸、強い倦怠感などが出た時点で、体は負担がかかっていることを示しています。休んでも戻らない場合や症状が強い場合は、中止したうえで医療機関に連絡し、状況を伝えてください。

家族に持病があり、本人がやりたがっています。どう伝えればよいですか

持病がある場合は、治療や薬と食事の関係があるため、本人の意思だけで決められる話ではありません。反対するより、まず通院先の医師に相談してみようという形で、判断を専門職に戻すのが現実的です。相談の場に薬の記録を持って行くと話が早く進みます。

ここまでの内容は、執筆時点で一般に説明されている情報を、安全側に寄せて整理したものです。医学的な助言ではなく、個別の状況に対する判断を示すものでもありません。体調に不安がある場合や、持病・服薬・妊娠などの事情がある場合は、この記事の内容よりも、担当の医師や薬剤師の指示を優先してください。

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