職場のストレスは、深呼吸や気分転換だけで解決できるとは限りません。業務量が多すぎる、人間関係に問題がある、長時間労働が続く、役割が曖昧、ハラスメントがあるなど、原因が職場環境にある場合は環境側の調整が必要です。
「自分の考え方を変えれば耐えられる」「ポジティブに考えれば解決する」と抱え込む必要はありません。セルフケアと同時に、上司・人事・産業保健スタッフ・外部相談窓口などを使ってください。
職場ストレスの原因を4つに分けて考える
対処法を考えるときは、まず負担の中心を整理します。原因によって、必要な対応が異なります。
| 主な原因 | 例 | 検討する対応 |
|---|---|---|
| 業務量・時間 | 残業、締切、担当過多 | 優先順位、担当変更、人員・期限の相談 |
| 人間関係 | 上司・同僚との摩擦、孤立 | 第三者を交えた相談、配置調整 |
| 役割・裁量 | 指示が曖昧、責任だけ大きい | 期待役割・決裁範囲の確認 |
| 安全・ハラスメント | 威圧、侮辱、性的言動、暴力 | 記録を残す、社内外の相談窓口を使う |
職場のストレスチェックで使う調査票も、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3つの領域を含むことになっています。何が負担になっているか、心身にどう表れているか、支えてくれる人がいるかを分けて見ると、相談の際にも状況を伝えやすくなります。
業務量が多すぎるときの対処
タスク管理を工夫することは役立ちますが、仕事量そのものが現実的でない場合に「時間管理が下手だから」と自分だけの問題にしないことが重要です。
- 抱えている業務を一覧にする
- 締切・重要度・必要時間を整理する
- 「どれを優先するか」を上司に確認する
- 追加業務を受けると何が遅れるか具体的に伝える
- 残業時間や休日出勤が続く場合は記録を残す
「全部やります」と引き受け続けるより、業務量を可視化して相談するほうが現実的です。
長時間労働には法律上の仕組みもあります。労働安全衛生法に基づき、時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる人は、申し出れば医師による面接指導を受けられます。月45時間を超えて健康への配慮が必要な人にも、面接指導などの措置を講じることが望ましいとされています。医師は就業上の措置について会社に意見を述べるため、業務量の調整につなげる手段にもなります。
人間関係のストレスは「自分がコミュニケーション上手になる」だけで解決しない
誤解を減らすための会話は有効ですが、相手から継続的に威圧・侮辱・無視などを受けている場合まで、自分の伝え方だけで解決しようとする必要はありません。
直属の上司に相談しにくければ、別の管理職、人事、コンプライアンス窓口、産業保健スタッフなど、利害関係の薄い相手を選ぶ方法があります。相談時は、感情だけでなく「いつ・どこで・誰から・何があったか」を簡単に記録しておくと状況を共有しやすくなります。
社内で解決しにくいときは、都道府県労働局や労働基準監督署内などにある「総合労働相談コーナー」も使えます。いじめ・嫌がらせ・パワハラを含む労働問題を、専門の相談員が面談または電話で受け付けており、予約不要・無料です。ハラスメントについては、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)も相談先として案内されています。
職場でできるセルフケア
セルフケアは原因を消す方法ではありませんが、負担が続くなかで回復の余地をつくる助けになります。
短い休息を取る
休憩の長さに万能な正解はありません。長時間座り続けているなら立つ、画面を見続けているなら視線を外す、緊張が強いなら数回ゆっくり呼吸するなど、作業から少し離れる方法を選びます。
昼休みを仕事で埋め続けない
忙しい日があるのは自然ですが、恒常的に休憩を削らないと仕事が回らないなら、個人のセルフケアより業務量の調整が必要なサインです。
「ポジティブ思考」を強制しない
「成長のチャンスだ」「自分なら耐えられる」と言い聞かせることが、かえってつらさを見えにくくする場合があります。認知行動療法も、無理に前向きな考えへ置き換える方法ではありません。事実と考えを分け、より現実的な見方を探す方法です。
生活側で整えたいこと
仕事の外では、回復の時間を確保します。特定の食品、サプリ、アロマなどで「ストレス耐性を高める」と考えるより、睡眠不足・欠食・飲酒の増加など明らかな負担を減らすほうが優先です。
- 睡眠時間を削って仕事を補わない
- 休日も仕事の通知から離れられない状態を見直す
- 飲酒だけを気分転換にしない
- 軽い運動や趣味など、自分が切り替えやすい活動を持つ
一般的な生活習慣の見直しはストレスを軽減する生活習慣7選で整理しています。
相談先は「症状」と「問題の場所」で使い分ける
| 相談先 | 向いている相談 |
|---|---|
| 上司・別の管理職 | 業務量、期限、役割、配置 |
| 人事・労務 | 勤務制度、異動、休職、ハラスメント窓口 |
| 産業医・保健師等 | 健康状態と仕事の両方を踏まえた相談 |
| 医療機関 | 不眠、気分の落ち込み、不安、身体症状など |
| 外部相談窓口 | 社内で相談しにくい問題、働く人のメンタルヘルス相談 |
厚生労働省委託事業「こころの耳」の相談窓口では、働く人向けに電話・SNS・メール等の相談情報が提供されています。セルフチェックも利用できますが、診断の代わりにはなりません。
こころの耳の相談は、働く人本人だけでなく家族や人事労務担当者も匿名・無料で利用できます。電話とSNSは平日の夕方以降と土日の日中に受け付け(祝日・年末年始を除く)、メールは24時間受け付けで返信は1週間以内とされています。受付時間は変わることがあるため、利用前に窓口のページで確認してください。
休む・受診することを検討したいサイン
次のような状態では、「もう少し自分で頑張る」より早めの相談を検討してください。
- 眠れない、または朝起きられない状態が続く
- 食欲が大きく変わった
- 出勤前に動悸・吐き気・涙が出る
- 以前できていた仕事の判断や集中が難しい
- 休日も仕事のことから離れられない
- 強い落ち込みや不安が続いている
- 自分を傷つけたい、消えたいという考えが浮かぶ
自分を傷つけるおそれがあるなど安全を保てない場合は、一人で抱えず身近な人や医療機関にすぐ助けを求めてください。差し迫った危険があるときは119番など緊急の支援を利用してください。ストレスが限界に近い状態についてはストレスが限界に近いサインでも詳しく説明しています。
ストレスチェックは診断ではない
職場のストレスチェックは、自分の状態に気づき職場環境の改善につなげる制度です。結果だけで病気を診断するものではありません。高ストレスと判定された場合や不調が続く場合は、必要に応じて面接指導や医療相談を利用してください。
厚生労働省の説明では、常時50人以上の労働者がいる事業場に年1回の実施が義務付けられています(50人未満の事業場も法改正により今後義務化される予定)。受検は義務ではなく、結果は本人に通知され、会社に提供するには本人の同意が必要です。受検しないことや面接指導を申し出たことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。面接指導の後、医師の意見を踏まえて時間外労働の制限や配置転換などの措置がとられることがあります。
よくある質問
職場ストレスは自分で解消するべきですか?
自分でできるセルフケアはありますが、原因が業務量やハラスメントなど職場側にある場合は環境調整も必要です。一人で解決する前提にしないでください。
上司に相談しても改善しない場合はどうすればよいですか?
別の管理職、人事・労務、産業保健スタッフ、コンプライアンス窓口など別ルートを検討できます。社内で難しい場合は外部相談窓口も選択肢です。
休職を考えるのは甘えですか?
休職は健康を守るための制度の一つです。症状や勤務状況に応じて、医師や会社の担当者と相談して判断します。
運動や瞑想で職場ストレスは治りますか?
気分転換や体調管理に役立つ可能性はありますが、過重労働や人間関係などの原因そのものを解決する方法ではありません。
ストレスチェックで高ストレスなら病気ですか?
ストレスチェックは診断ではありません。結果と実際の症状を踏まえ、必要に応じて面接指導や医療相談を利用します。
まとめ
職場ストレスは、セルフケアだけでなく「原因を特定して職場側を調整する」という視点が重要です。業務量なら優先順位や担当、対人問題なら第三者を含めた相談、健康状態が悪化しているなら産業保健・医療につなげます。仕事を続けるためにも、限界まで耐えてから相談する必要はありません。
参考
- 厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」 https://kokoro.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「こころの耳」相談窓口(電話・SNS・メール) https://kokoro.mhlw.go.jp/soudan/
- 厚生労働省「ストレスチェックって な~に?」 https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_stresscheck.html
- 厚生労働省「こころの耳」長時間労働者への医師による面接指導制度 https://kokoro.mhlw.go.jp/mensetsushidou/
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
